美しい猫を見ましたか

ある日、買い物しているとき、見知らぬ少女にじっと見つめられることがあった

とても静かなスーパーマーケット

小学校にまだあがっていなくらいの幼女。その家族とすれ違ったのだが

 

おもしろいほどの驚きぶりで少女がわたしを凝視している

 

さほど奇異な格好はしておらず、その幼い少女だけがあんぐり口をあけてわたしを見ていたのがすれ違いざまにも視線でわかった

 

見返すのも悪い気がして、冷凍コーナーの大きなショーケースを見るふりで、ガラスに映る背後の少女の視線を観察していたのだが、あんぐり(文字通り口を大きくあけて)わたしの背を見続けているのが見えたので、かえって面白いほどだった

そのときは、なにかわからないが彼女の興味を引くものがあったのだろう、と思ってやりすごし買い物を続けた

 

レジあたりでまた邂逅し、なおも少女はまだわたしの肩あたりを口をあけて見ている

 

子供の興味のありどころはわからないものだ、と先を急ぐので帰路についたのだが、

そういえばこんなおもしろい子に会ってね、という会話をしているうち

「○○ちゃん(猫の名)の姿でも見えたのかも」という笑い話になった

 

子供というのは幼少時代にしか見えないモノがあるという逸話(おとぎ話)があるけれど

 

わたしはまったく見えないタイプ、子供時代から今に至るまでずっと。

見える系の人の話を聞いても、きっとホラー小説のようなひとを驚かせたい架空のサービス精神だと思っているようなリアリストであるにもかかわらず、

少女の見たものがそうであったらどんなにいいだろうか、と思ったのも事実だ

 

 

少女に何を見たのか聞いてみれば良かったのかもしれない

美しい猫を見ましたか、と。

 

 

2010.03.30撮影