崩壊した家族の物語

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Riverside

幼い日々を、川辺の町で過ごしました❦

 

そのせいか、ジョン・ハート氏の「川は静かに流れ」は冒頭からぐいぐい引き込まれました。

主人公が幼い日を過ごした川辺。そこで釣りをする少年を見ながら過去を振り返るシーンが、やけにリアルで、情景と過去のリンクが自然に感じられたのでした。

John Hart

ハードボイルドの感情を極力排した、情景を淡々とクールに描くスタイルが好きです。

このスタイルには、崩壊した家族(はたからは問題なく裕福そうな家だが、実情はこじれている)を描くのが、よく似合うのでしょうか。その系統の物語が多いように思います。

過去を振り返って悔いたり、あのときは一瞬は幸せだったと思ったり、子ども時代の多幸感は砂の城のようにはかなくもろかったと思ったり、というのは、大人になると誰しも心当たりがあるものかもしれません。

崩壊した家族をメランコリックに書く作品というのは、メロドラマ風で雰囲気があるといいましょうか。

まあ、正直、かなり好みであります

 

既読の三作品は、見事にどれも崩壊した家族を書いています。

キングの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫) ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • キングの死 高圧的抑圧的絶対君主の父親。親の言いなりに結婚相手を選び後悔している息子。
  • 川は静かに流れ 殺人の汚名を着せられ故郷を捨てた男が帰郷する。
  • ラスト・チャイルド 美しいが壊れた母と暮らす少年が消えた父と妹を探す。

結局はどの作品もみな、あらたな道を歩み出すラストを迎え、過去の呪縛は解けきれないまでも乗り越えるのですが、後味としては苦い。

共通して、ちょっと壊れて病んだ女性が出てくるのも、きついものがあります。

とはいえ、三作品の中では、川は静かに~がもっとも好みでした。

悪友ダニー(再会はかなわないけれど)が、ひとりずっと主人公の無実を信じていた、というエピソードが哀しいのでした。

 

過ぎた時間は二度と取り戻せない、というあたりまえのことが身にしみるように感じられるジョン・ハートの作品群。

もとはあんなしあわせな時もあったのに、壊れてしまったものを元に戻せるならばそうしたい、と格闘するように、ラスト・チャイルドの少年もつっぱっています。

デビュー作のダメ男氏も、母の死さえなければこんなことには、と失った時代に囚われています。

 

いつでも過去は美しい。

昔、ヒットした映画のラストシーンでも同じことを思ったのでした。

しわしわの老婆となったヒロインが、ラストシーンで夢を見るとき、朽ちた難破船の中が豪華に戻り、自分も美しい姿で、過去の人々もみな笑顔です。

しかし思うに、結局のところ、彼女は自分の力で自分の人生を生ききり、切り開いてきたので、あの人たちは、彼女にとって過ぎ去っただけの幻です。

でも、思い出すとき、それはいつも輝いて美しいのでした。

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